シェアハウス専門ポータルサイトのスタッフによる、シェア生活を楽しむための探検レポートブログ。東京、神奈川、千葉、埼玉、 そして全国各地のシェア賃貸住居をひたすら探検する専門ポータルサイトの隊員達。明日はあなたの物件へ・・・!?
文化はやがて、街を巻き込む。
福岡の井尻にその「基地」が誕生したのは、2009年春のこと。
コンセプトは、アーティストのための賃貸マンション。入居者が24時間無料で使用可能なスタジオや、制作活動のための部屋を備え、共用の多目的ホールではライブイベントや展示会も頻繁に開催。
アーティストたちの“家でアレができたら・・・”という思いを詰め込んで具現化された「スタジオアパートメント KICHI」。その取り組みはシェアハウス内に留まらず、イベントやアート活動といった多角的なアプローチを通じ、井尻の地域を巻き込んで人気を博しています。
一概にコンセプトを強く打ち出しているシェアハウスが成功するとも限らない(なかなか難しいものです)ですが、KICHIの場合はオープン前から入居を決めていた方がいるなど、なかなかに需要が高かったよう。
「入居」ではなく「潜伏」という表現がオフィシャルだというその基地へ、早速潜伏してみたいと思います。
井尻の駅から歩くこと数分。青空に映える一棟のマンションが見えてきます。
元は社員寮だった建物との事で、部屋数もおよそ30室と多め。建物自体は2002年築と、まだまだ築浅です。
マンションは通りからすこしセットバックした位置に建っています。
エントランスまでのアプローチに互い違いに設置された木製のルーバーが、実にテクニカル。外部からの目線を遮りマンション全体の世界観を生み出すと同時に、街に対して鍵を掛けきらず、適度に開いていくバランス感覚。
引き込まれるようにKICHIの奥へと誘われるような体感づくりにも一役買っています。ここだけで既に、いたく感心させられることしきり。シェアハウスの設計に真剣に頭を悩ませたことがある人は、きっとこの巧みさに唸るはず。
ルーバーの間を通り、角を曲がると目の前がエントランス。
ルーバーが作り出した小道をぐるりと旅するのは、ほんの一瞬。
でも、その一瞬が絶妙に街と繋がるこの小さなセミパブリック・ゾーンを生み出し、帰宅した入居者の意識を少しだけ緩め、KICHIの世界にやってきたことを思い起こさせるのです。
エントランスのドアには「KICHI」のサイン。
STUDIO APARTMENTのイニシャルで構成されたロゴも、よく見れば建物を模したテクニカルなデザイン。
一見普通に見える細部が、実はとても深くて巧み。これが井尻が誇る先進アパートメントKICHIが、とにかく玄人受けする理由ではないかと思います。
それでは、エントランスから内部へ。
マンションタイプの建物ということで、エントランスにはドアが2枚。
外側のドアを通って建物の中に入ると、その先には、次なるオートロックの扉。右手には集合ポストもチラリと覗きます。
オートロックのドアの奥が、エントランスホールです。
デッキが組まれテーブルセットが配置されたテラスのような一角は吹き抜けになっていて、上からすうっと光が落ちてきます。
テーブルセットをぐるりと取り囲むのは、アートイベントやライブの告知を中心としたフリーペーパーの数々。
椅子に座るときはこのフリーペーパーたちを踏まないようにご注意を。・・・ん、なにか視線を感じますね。
フリーペーパーを見守る(?)鋭い眼差しの持ち主はこちら。
目からビームでも出てきそうな、なんとも精悍な顔立ち。
エントランスホールから2枚目のオートロックのガラス戸を開けて中に入ると、そこには多目的スペースが広がっています。
このスペースに面して音楽スタジオが2箇所配置されています。
それほど大きいわけではありませんが、不思議と“人が集まる”ことがイメージできてしまう空間。
この素っ気なくてフランクな感じは、ライブスタジオなどのロビーに似た雰囲気があるような気もします。
そんなムードを生み出すのは、ほどよくラフに配置されたテーブルやチェアと、ラウンジの一角に鎮座するアップライトピアノ。
周囲の雰囲気と黒光りするピアノが新鮮な組み合わせですが、クラシックにジャズに、大活躍の予感。
このラウンジ、普段は共用部として使っていますが、イベント時にはこのようにスツールを出したりして、舞台と客席にも早変わりするとか。
イベントの時は空間のコンパクトさと相まって、大変な熱気だそうです。
柱をラフにくり抜いた窪みには、KICHIのカードが。
ちなみに隣にいるのは、銭形のおやっさんから逃げているであろう彼。
マンションということで各部屋にミニキッチンが付いているため、共用のキッチン周りはバーカウンターという機能。
飲み物を用意したり簡単に洗い物をする、といった使い方になりそうです。
簡素な設備ですが、きっと、このラウンジになくてはならない大事な主役。
続いて、コンセプトの核である音楽スタジオを見ていきます。
まずは、多目的ホールから続く廊下を取り囲む6つのドア。
このドアの先が少し小さなユニット、個人練習室になっています。
音楽をやる人にとって、なにせ頭が痛いのは日常的な練習の場所。費用面もさることながら、毎度毎度予約を入れて、街のスタジオまで出かけていって・・・と、仕方ないのですが、こうした小さなバリアが多いのがクセモノ。
日々寝起きする自宅に併設された24時間無料のスタジオは、こうした小さなバリアを取り除き、暮らしと音楽の間を隔てる距離を限りなくゼロに近づけてくれそうです。
さて、多目的ホールに面しているのは、セッション用の広めの練習室です。
無造作に置かれた楽器は入居者さんの私物とのことですが、ドラムセットを設置するとこんなスケール感。長方形の空間なので少し縦長の展開となりそうですが、4〜5人編成のバンド練習なら充分な広さかと。
そして、もうひとつのポイントは、窓。
防音の関係か一般にスタジオにはあまり開放的な窓は付いていないものですが、KICHIの場合はこの通り。
もちろん窓は2重サッシですが、実はマンションのスタジオ側はプライベートガーデンを隔てて線路に面しているのです。よって、周辺の住宅もそれなりに外からの音に対しては対策済み。少しぐらいの音漏れはシャットアウトしてくれるというわけです。
実はKICHIのスタジオアパートメントという企画には、こんな特殊な立地特性を逆手に取った必然性もあるのです。住宅企画としても、唸るしかないこのテクニカルぶり。
ガラス越しに外の緑を眺めながら楽器を演奏するのは、なかなか新鮮な体験になりそうです。
それではエレベーターで上階に上り、専有部を見ていきます。
実は、家のどこでもアートキャンバスになる懐の深さも魅力。
日常的に吹き抜け部分から大きな布がつり下げられていたり、部屋ごとに作家が分かれる展示会をしたこともあるそう。残念ながら写真はありませんが、各フロアには簡易暗室が設けられ、写真の現像作業に使う事ができるようになっています。
中央の吹き抜け部分から乗り出すと、先ほどのデッキが見下ろせます。
きっとデッキの半分近くを覆っていたあのフライヤーの数だけ、いえ、それ以上のアートがこの基地を通じて日々発信されているのでしょう。
では、ドアを開けてアーティストたち潜伏場所となる部屋へ。
ドアハンドルをガチャリ。
ゆっくりとドアを手前に引くと、まっすぐに奥へと続く廊下が現れます。
間取りは通常の1Rタイプ。収納が多いせいか、廊下は一般賃貸よりも気持ち長めかもしれません。
靴箱は玄関のすぐ脇に備え付けられています。
普段靴箱も共用のシェアハウスを多く見ているせいか、ひとりで使用出来ると考えると、なかなかの収納力だなぁ、なんて感心してしまいます。・・・と、思いながら対面の壁を見てみると、収納がもう1つ。
もう、よほどのファッショニスタでない限りはしっかり収まるかと。もちろん靴箱ではなく、ちょっとした物の収納にも重宝しそうです。
廊下を進んだ奥には、約8畳のベッドルームです。
目に飛び込んで視線をさらうのはやはり、オリジナリティ溢れる壁面の造作。
「フリーシェルフ」と呼ばれるこの仕上げ、ルーバーの隙間に板が挟めるようになっている、とても面白いつくりです。この板はもちろん可動式。
ディスプレイの棚にしたり、PCを載せる作業テーブルにしたりと、使う人によって用途は様々だそう。他の人の部屋に遊びに行って、新しいアイデアを貰うのも楽しそうです。
カスタマイズのポイントは天井にも。
配線ダクトレールの照明で、部屋の光源を簡単に増やすことが出来ます。部屋で展示などをする場合だけ取り付けたりすることも可能です。
ベッドルームの一画にはクローゼットが。
スタンダードなタイプですが、上段を使いこなせば、収納力は悪くなさそうです。
部屋の奥には掃き出し窓が。
窓の外は、ウッドデッキが敷かれたベランダになっています。
もちろん物干しも可能。窓向きの関係で西日は強いですが、日当たりは抜群です。
廊下にあるキッチンはコンパクトなタイプ。現在は2口のガスコンロが設置されています。
ひとり暮らしを前提に作られているため、シンクもコンパクト。大きな鍋やフライパンなどは、洗い物がちょっと大変かもしれません。
とはいえ、少ない道具と少ない設備でしっかりと料理を作るのが本当の料理上手なんて話もありますし、ココは男女ともに腕の見せ所ではないでしょうか。
キッチンの対面には水まわり。
折り戸の先はバスタブ付きのスタンダードなユニットバス。
脱衣室はありませんので工夫は必要ですが、まぁ、自分の部屋ですしね。
バスルームの隣は独立したトイレです。
一般賃貸を探すとき、バスルームとトイレが別であることに拘る方は多いはず。
やっぱり、そこは別であって欲しいですよね。できることなら。
隣室の502号室。
配置の反転はあるものの、基本的な間取りはどの部屋も同じです。
実はスタジオだけでなく、各部屋も防音工事が施されていて、自室での練習も可能なのだそう。
とはいえ完全に聞こえないわけではないということですが、それでもある程度は自室での音出しが実現できるのは、"アートや音楽”という共通言語を持つ入居者さんが集まっているおかげ。
シェアハウスでも普通の集合住宅でも、「音」はなかなかトラブルになりやすい部分です。でも、あらかじめ多少なりとも「音を出す」前提を共有する住宅では、お互いのストレスが格段に和らぐのは大きな大きなポイントだろうと思います。
建物の中には専有部とは別に、友人や家族が遊びに来たときに宿泊のできるゲストルームがあります。
こちらはそのゲストルーム、206号室。
間取りは他の部屋と全く同じタイプになります。
ゲストが生活に困らないよう、冷蔵庫や電子レンジなどの備品がそろっています。
廊下の突き当たり、ベッドルームに家具や飾りを入れるとこんな雰囲気になるという良い見本にも見えますね。
ゲストルームでありながら、モデルルームの役割も兼ねているようです。
件のフリーシェルフは、段を揃えればベッドのサイドテーブルのように使用できます。
部屋のアクセントとしてはインパクト抜群。
少し照明を暗めにすれば、ムーディーな雰囲気も自在に演出できます。
こんな部屋に泊まれるなら遊びに行きたい!と勢いが出るところですが、もちろんのこと別途料金は必要ですので、そちらもお忘れなく。
最後に建物の周りをぐるりと見ていきます。
表通りに面した引き戸の中は、マンションのゴミ置き場になっています。
集荷の日に出す、という通常のゴミ収集所と同じルールが決められています。とはいえ、敷地内にあるのはやはり便利かと。
建物脇には駐車場。
駅からは徒歩2分という距離ですが、機材の運搬なども考えれば、たっぷりスペースが確保されているのは嬉しいものです。
駐車場の奥は駐輪スペース。
もちろんバイクもOKです。
博多までは電車で約7分、駅からシェアハウスまでは徒歩2分と、部屋のドアを出てから博多到着までの所要時間は(タイミングが良ければ)わずか10分です。
笹原駅の他、大牟田線・井尻駅も徒歩圏内。天神へ行くならコチラの方がアクセス良好です。
シェアハウス周辺は住宅街。
夕方には犬の散歩をする人や親子連れが多くなる、のんびりしたエリアです。
先ほどもお伝えしたとおり、シェアハウスは駅から徒歩2分という距離。
この近さで特急列車が通過します。線路が近い立地ならではのコンセプト、納得です。
「スタジオアパートメント KICHI」を運営しているのは「コヤマコンセプト株式会社」さん。
九州の地で不動産業に長く携わってこられた事業者さん。“「文化」によって不動産を再生・創造する「まちづくり」の会社”を自負する言葉通り、息を吹き返したマンションと、そこから派生していく街を巻き込んだプロジェクトの的確な展開には目を見張るものがあります。
ミュージシャンが集まってイベントを開催したり、エントランスのセミ・パブリックゾーンでフリーマーケットを開催したり、はたまた、そこから派生して井尻の他の場所でアートイベントを行ったり。
KICHIの先進性はコンセプトを設定したことでも、ましてやイベントを開催していることでもマンション型であることでもなく、住宅をめぐる一連の諸条件を、無理なく、そして無駄なく解きほぐす、その的確なアプローチそのものにあります。
東京で生まれた現代シェアハウスという住まいの文化には、基本的に地域コミュニティが希薄化しやすい都市部において、住宅の中でその補完となるコミュニティのある住環境を実現するものという前提があるように思います。
だからこそ、逆にその地域といかに繋がっていくのか、関わっていくのかというテーマに対する回答は、まだまだ暗中模索の段階です。
そんな中、まず集合住宅に「アートと音楽」というスパイスを投じ、そこから派生する繋がりを、少しずつ巻き込むようにして街に落とし込んで行く手法は実に巧み。
一方では適切な距離を図りつつ、お互いの間にある隔たりを少しずつ取り払うことで、自然と住まいと地域との心地よい交流が生まれてくるような気がします。
聞けば企画を推進したご本人も、以前はミュージシャンとして活躍されていたのだそう。不動産やまちづくりに対してはもちろんですが、アートや音楽、そしてとにかく「面白い」ことに熱い方です。きっとKICHIに潜伏するアーティストたちの、頼りがいのあるアニキになってくれるはず。
防音性能の高い部屋を探していた方、もういっそのこと、スタジオに住んでしまいたい方。家でセッションしたくなったら、コチラまでお問合せを。
目の前のものをどうするか、うんうん唸っているより、その一歩先二歩先を考えていると、意外と目の前のものに対しての解がすんなりと見えてくる。
その後は前進あるのみ。結果はきっと、後を付いてきます。
(テルヤ)
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